危険ナ香リ
「嫌ってゆうか……うるさいってゆうか、なんてゆうか」
ハッキリしない言葉だと思ったけれど、あたしはそれはそれでいいんだと思う。
誰でも、いつでもハッキリとした答えを持てるわけじゃないって、分かってるから。
「今までは敦だけだったから静かだったんだけどねぇ……」
……それは、どういう意味なんだろうか。
まるで、今美波先輩の家にいるのは佐久間先生だけじゃないように聞こえるんだけど……。
と、そう思っていたのはあたしだけじゃなかったようで、
「今、美波先輩の家に佐久間先生以外に誰かいるんですか?」
柚乃ちゃんが美波先輩にそう聞いていた。
やっぱりそう思うのは自然なことだよね、と納得した。
そして、自然と出てくるような質問を投げかけられた美波先輩は、一瞬、“あ”という顔をする。
「……」
「美波先輩?」
「……き、」
「き?」
「企業秘密、です」
秘密にするということは、秘密にしなければいけないような人が住んでいる、とゆうことだろうか。
“秘密にしなければいけない人”……なんて言ったら、真っ先に思い浮かぶのは……やっぱり……。
「い、いいからご飯食べましょ。あたし、もうお腹減りまくってさ、2時間目から腹の虫がすごい音で鳴り響いてたのよね」
「ちょ、2時間目って、早すぎませんか?」
「だって今日の朝ご飯、味噌汁しか飲んでこなかったんだもの」
「せめて炭水化物をとりましょうよ!ってか、よく味噌汁だけで2時間目まで持ちましたね」
「うふ」
「いや、“うふ”ってなんですか。“うふ”って」
……佐久間先生、カノジョと一緒に住んでるんだ……。
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