危険ナ香リ


 でも、美波先輩がいるのに、カノジョと一緒に住むなんて。


 非常識だよ。

 美波先輩に迷惑だよ。

 美波先輩が可哀想だよ。


 ……にしても、一緒に住むほど深い仲なんだ……。




「恭子ちゃん、どうしたの?」




 ずーん、と沈み込んでいることがよく分かるあたしの様子を見て、美波先輩がそう問いかけてくる。




「……いえ。なんでもないです」

「でも、落ち込んでない?」

「……そんなこと」

「玉子焼きあげるから元気だして?」

「……すいません。ありがとうございます」




 やっぱり、あたしは佐久間先生のことを諦めなきゃいけない。


 だって佐久間先生には一緒に住んでるカノジョがいるんだもん。


 ……カノジョがいる相手に告白なんかしても、ふられることは目に見えてる。


 ふられるって分かってて告白する勇気なんか、持ち合わせてない。


 あたしにそんな勇気はない。


 ……どうして、あたしは佐久間先生を好きになっちゃったんだろう。




「そういえば、日曜日のことなんですけどね、美波先輩」

「ん?」

「美波先輩は受験生なわけで、入試だってそろそろなわけじゃないですか」

「うん」

「やっぱ遊ぶより勉強しましょうよ」




 日曜日のことについての会話を全く聞かずに、あたしは思考の世界へと飛んでいた。


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