危険ナ香リ





「あの時、恭子ちゃんはメイド服を着てて、お店の宣伝するために看板片手にウロチョロしてて。でも宣伝らしい宣伝ができてなかったわよねー。声が小さかったわ」




 すぐに謝ってしまいたい気分になった。


 なんだか自分の恥ずかしい秘密をバラされたみたいで、恥ずかしくて、落ち込む。




「でね、不良っぽい奴に肩ぶつかっただけで涙目になって……。その瞬間に一目惚れよ」




 そんなこともあったなあ。


 まさか、そんな場面を美波先輩に見られていたなんて思ってもみなかった。


 ……まあ、周りには人がたくさんいたし、見られててもおかしくはないけれど。




「本当はそのまま拉致したかったんだけど、敦に止められちゃった」




 にこにこ笑う美波先輩の顔に悪気という文字は見られなかった。


 ……拉致って……あなたは拉致が好きなんですか……!?


 佐久間先生から見せてもらったメールの内容を思いだし、愕然とする。




「でもどうしても諦められなくってねぇ。保健室掃除だって聞いたから、敦に頼んじゃった」




 な、なるほど。


 って、納得しちゃっていいのかなあ。

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