危険ナ香リ



 ぶつけた頭の痛みが止んできたけど、未だに頭を押さえていると、急に、もわっと嫌なニオイが広がる。


 ピクリと眉を動かして、チラリと佐久間先生を見ると、やっぱりタバコを片手に持っていた。




「タバコ止めなさいよ。恭子ちゃんはタバコが嫌いなんだから」

「え。やっぱりそうなのか?」

「そーよ!だからあたし、今日は頑張って部屋中に消臭スプレー振りまいてたんだから!」




 なんであたしがタバコのニオイが嫌いなことを知ってるか分からないけど……とりあえず、ご配慮ありがとうございます。


 それと、佐久間先生って……。


 パッ、と頭の中に保健室に置かれていた消臭スプレーを浮かべる。


 “やっぱり”って、もしかして、あたしがタバコのニオイを嫌いだって知ってた……?




「そりゃ悪かったな」




 そう言って灰皿にまだ長いタバコを押し付けた。


 今、佐久間先生がその言葉を投げた相手は、あたしだったのか。

 それとも美波先輩だったのか。




「……ところで美波。清瀬のこと、いつ帰すんだ?」




 それはただ単純に話を逸らすためだけにある質問のように感じられた。

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