危険ナ香リ
この人は、何故あたしにそんなことを言うんだろう。
佐久間先生のことをよく知っているような話し方をするのに、何故、あたしにそんなことを……。
“側にいるてあげて”と頼むべきなのは、あたしじゃなく、カノジョの方なんじゃないの。
「あたしは……」
側にいることはできない。
だってあたしは佐久間先生にとって“ただの生徒”だから。
……側にいたくない。
もう、傷つきたくないから。
「もう、佐久間先生の側にいたくは、ないです……」
ざわざわと音が聞こえる。
この世界の脆さを、強調するように。
「……好きなのに、側にいたいと思わないんですか?」
泣きたくなった。
そう思いたいと思いながら、やっぱり、どうして好きになってしまったんだろうと後悔して、泣きたくなった。
「好きだから、側にいられないんです」
祐の時は、ただ嫌われるのが怖かったから近づけなかった。
でも今はそんな気持ちは微塵もない。
……何故なんだろう。
分からない。分からないけど……あたしは、嫌われることよりも、自分で傷つく方が嫌だと思ってる。
近づけない。
……傷つくから。
それは好きであればあるほど、より深く傷つくから。
「あなたの考えは、よく分かりません」
それは、飛鳥くんにも言われた言葉。
……二度目にもなるその言葉を、あたしは静かに受け止めた。
「……だってあたしは、変、だから」
泣きそうになった。
それを悟られる前に、椅子から立ち上がる。
そんなあたしの行為に戸惑いを露わにする佐々木さんの声があたしの名前を呼んだ。
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