危険ナ香リ



「俺に1人で掃除しろってか!?それが本気なら監禁して躾直してやるぞ!」

「ひぃっ!」




 佐久間先生から流れ出るオーラがあたしを頭の上から恐怖で押さえつける。


 な、なんて威圧感……!


 しかも、顔がいいから、無駄に恐怖が倍増だし……っ。


 こ、怖いよぉお……っ。




「ったく……。全然来ないからどうしたのかと……」




 はあ、と大きく短いため息を吐き出して、あたしを掴んでいない方の手で髪をかきあげる。


 その様子を見て、少しドキッとしてしまう。


 さっきまで、鬼の目をしていたのに、今はそれがちょっとだけ引っ込んで……いつもの佐久間先生が、見えた。


 そして、佐久間先生の言葉に含まれている意味に、心配されていたのかな、と自惚れてしまいそうになる。




「葛西に聞いたら“図書委員に会いに行くって言ってた”っていうし。図書委員って言ったら佐々木しか思い浮かばなかったから……あーもーっ。なんでそう簡単に人についていくんだ」




 柚乃ちゃんに、佐々木さんに会うって教えたことを思い出した。


 その時はまだ佐々木さんの名前が分からなかったから、図書委員と呼んでいた。


 佐久間先生は何故“図書委員”の単語だけで佐々木さんを想像したんだろう。


 小さな疑問を抱えながら、あたしは佐久間先生を見つめる。


 不意に、目が合った。


 それだけで、またドキドキしてしまうあたしって……どうなんだろう。


 パッと目を逸らして、どうにかして落ち着こうと頑張った。




「子供じゃないんだから、知らない奴についていくなよ」

「す、すいませ……」

「しかも佐々木について行くなんて……お前、食われたいのか」

「へ?」




 その佐久間先生の言葉が、どうゆう意味なのか分からなくて首を傾げる。


 それに気づいた佐久間先生は小さなため息をはいた。




「つまりだな。ベッドの上で裸になってあんなことやこんなこ」

「ぎゃーっ!!」




 なんか分かった!


 分かったからもう言わないでっ!


.
< 383 / 400 >

この作品をシェア

pagetop