危険ナ香リ


 当たり前のようにピクリと眉を動かし、不愉快そうな顔をする。


 お、怒ってる……っ。


 そう思い、顔を青くしたあたしに、佐久間先生の視線が向かう。




「ごっ、ごごご、ごめんなさいぃっ!」




 謝らなければいけないように思えて、慌てて謝った。




「先生、泣かせるのは如何なものかと」

「……」

「それに、実際本当のことなんですし、何もいえないですよね?」

「……」

「でも……先生の態度次第ではこれから、どうなるか分かりませんよ」




 佐々木さんがそう言った。


 その瞬間、佐久間先生が小さな舌打ちをする。


 そして、ぐいっとあたしの腕を引っ張った。




「面白がるのもいい加減にしろよ」




 そう言ってあたしをつれて図書室から出ようとする。


 廊下に、もう人はいなかった。


 そう確認した時に、後ろでクスクスと笑い声が聞こえる。




「面白がってるわけじゃないんですよ」

「うるさい」




 な、なんか、この緊張した空気、嫌だ……。


 たらりと冷や汗が流れそうになった時 ―――― ぐっと、引き止められた。


 空いている方の腕を、後ろにいた佐々木さんにつかまれてしまったからだった。


 それに気づいた佐久間先生が、足を止めて振り返る。




「なにして」

「いいこと教えてあげましょうか」




 お、お願いだから、あたしを挟んで会話しないでください……っ。


 両腕を掴まれて、間に挟まれて。


 これほど居辛い場所があっていいのだろうか。




「彼女、結構一途ですよ」




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