危険ナ香リ


 でもそれは足だけで、しかもかろうじて見える程度で。


 パッとみただけじゃ気づかない。




「誰だ」




 ビクリと足が震えたのが見えた。


 それからしばらくして隠れることを諦めたのか、そろりと、隠れていた人が姿を見せた。




 黒くて長い髪をした、綺麗な女の人の姿が現れた。




 今までは、美波先輩が一番綺麗って、そう思ってた。


 だけど、その人は美波先輩と同じぐらい……ううん、もしかしたらそれ以上に、綺麗だった。


 同性であるあたしすら、その綺麗さに惚けてしまいそうになっている。


 ……惚けてしまうに達していないのは、その人が、私服を着ていたから。


 それに、顔立ちからしても高校生には見えない。


 どう見ても、大人。


 ……どうして、学校にこんな綺麗な、大人の女の人がいるんだろう。




 そこまで思った瞬間、ガタッと佐久間先生が立ち上がる音がした。




「はあ!?」




 ……佐久間先生が、こんなに取り乱しているところを見るのは、初めてだった。


 その人に指をさし、“なんでいるんだ”と言いたげな顔する佐久間先生。


 その表情をみた後、あたしはようやく、2人が知り合いなんだと気づいた。




「あ、あは。ごめんね、驚かそうと思って隠れてたら、ちょっと出づらい空気になっちゃって……」

「だ、だとしても、どうやって学校の中まで入ってきたんだ」

「事務員の人にお願いって頼んだら簡単に通してくれたわよ」

「うわ!役立たず!」




 ……どんな関係なんだろう。


 そう疑問に思うあたしをそっちのけに、2人は話を続けていく。


 流れていく会話に耳を傾けながら、……忘れられてるような気がしてきて、なんだか不安を感じた。


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