危険ナ香リ
それからはからかわれても黙り込んで、あたしが喋ることと言えば道順の説明くらいだった。
窓は、いつの間にか閉められていた。
そして、車はようやくあたしの家についた。
「ほら、もう機嫌直せよ」
……機嫌が悪いわけじゃあないんだけどな……。
なんてことを言わずに、ドアを開けた。
「送ってくれて、ありがとうございました……」
「暗いぞ。そんなに期待してたのか?キス」
……もう何も聞こえない。だから何も言わない。
うつむいたままそう自分に言い聞かせていると、佐久間先生に腕を掴まれた。
降りようとしていた足を引っ込めて振り向くと、顔に影ができた。
―――― え?
すぐ近くまできた佐久間先生の顔にビックリして、顔を赤くする。
そしたら佐久間先生がまた、少しだけ顔を近づけてきた。
……っ!?
ギュッと目を瞑る。
「残念。また期待に応えられなかった」
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