危険ナ香リ



 耳元で、心底楽しそうに囁く佐久間先生。


 くすぐったくて身を引くと、佐久間先生の手が離れていく。


 見ると、すごく愉快そうに笑っていて……それがすごくムカついた。




「佐久間先生なんか大っ嫌い!!」




 今日一番の大声を出して、半泣き状態で転がるように車内から飛び出した。


 佐久間先生なんかっ!佐久間先生なんかかっこよくない!!


 顔がよくったって性格がよくなきゃ、かっこいいなんて言えないよ!


 あんな最低な人が、なんで先生なんかやってるのか分かんない!






 その夜はひたすら佐久間先生の悪口ばかりだった。


 もうっ!バラしてやる!


 美波先輩とのこと、バラしてやるんだから!


 ……って言っても、バラしたらあの人が何をしてくるか分からない……。


 “監禁”なんて言葉を口にする、あの性悪を思い出しては枕に顔をうずめた。


 ……もう関わりたくない。


 思い出せば思い出す度、その想いが強まった。


.
< 49 / 400 >

この作品をシェア

pagetop