危険ナ香リ







 次の日。


 寝不足の目でトボトボと教室へと入ると、電車通学で朝が早い佐藤さんが、足音をたててあたしのところへやってきた。


 ビックリしてせいで、寝不足だってことは全部吹き飛んだ。




「清瀬さん!日誌、なんで書いてないの?」




 ……日誌……。


 っああ!そうだ日誌っ!!


 すっかり忘れていたあたしは、口に手を当てて顔を青くさせた。


 しまった!すっかり忘れてた……!




「あたし昨日頼んだじゃん!約束破るなんて最低だよ!」




 “最低”

 その言葉がズシンと重くのしかかった。


 ……嫌われ、ちゃったかな。


 ズキズキと痛む胸が、そんな心配をしてドキドキと響く。


 周りの子達の視線がこっちに向いているなんて、気づかなかった。




「ご、ごめんなさい……」

「あーあ。仕方ないや。清瀬さんに頼んだのが間違いだった」




 ひたすら悲しかった。


 “頼んだのはそっちでしょ!”とか、“だったら頼まないでよ!”とか、そうゆう悪口が浮かばなかった。


 ただそこにあるのは悲しみだけで……。


 怒られてることが情けなくて、嫌われたことが悲しくて、じわっと目に涙が浮かんできた。

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