危険ナ香リ







「最初から他人に任せる方がバカなんじゃねーの?」






 後ろから、低い声が聞こえた。


 振り向くと、カバンを片手に持った飛鳥くんの姿が見えた。




「てか、邪魔。退いてくんねぇ?」




 視線は佐藤さんに向かっているけど、今の言葉は、どう考えたって目の前に突っ立ってるあたしへの言葉だと分かった。


 怒られてた気がして、ビクッと肩を震わせてからうつむいた。




「ご、ごめんなさ」

「いや、清瀬さんじゃなくて」

「え?」

「そいつが邪魔なんだよ。俺の席の真ん前に突っ立ってんなよ」




 “そいつ”と言われた佐藤さんは確かに飛鳥くんの席の真ん前に立っていた。


 廊下側の一番後ろの席だから間違いない。飛鳥くんの席だ。


 佐藤さんは“そいつ”と言った飛鳥くんをキツく睨みつける。


 すると、飛鳥くんも容赦なく睨みつけると、佐藤さんは舌打ちをして身を翻した。




「……清瀬さんもさ」

「え?」

「他人の仕事なんだから、簡単に引き受けんじゃねぇよ」




 見下ろしてきた2つの目が、あたしを捕らえた。

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