危険ナ香リ



 嫌われるよりなら1人の方がよかった。


 でも、寂しい。


 移動教室がなくて幸いだと思った。


 だって、1人で移動するなんて寂しいから。






「きょーこちゃーんっ!」






 そんな寂しい時間を過ごして、お昼はどうしようかな、なんて考えていた時だった。


 一際目立つ綺麗な容姿をした美波先輩が、あたしの名前を叫びながら教室にやってきた。


 しかも嬉しそうに、お弁当を2つ抱えて。




「今、暇?」

「は、はい」




 周りからの視線が痛い。


 そりゃそうか。


 なんたって学年が違う人がいきなり教室に入ってきたんだもんね。


 しかも相手は、佐久間先生の恋人と噂になっている美波先輩ときたもんだ。


 注目を浴びるのも仕方がない。




「じゃあ一緒にお弁当食べよう?」

「へ?」

「れっつごー」

「へ!?」




 いきなり言われても……なんて言ったってあたしが暇なことに変わりはない。


 それに、このままだったら1人でお弁当を食べる羽目になってたから、寧ろありがたい。

.
< 53 / 400 >

この作品をシェア

pagetop