危険ナ香リ





 あたしの隣に座った美波先輩は始終1人で喋っていて、あたしはたまに相槌をうつだけだった。


 「楽しいですか」と聞けば「うん。楽しい」と答える美波先輩の想いがわからなかった。


 特に楽しい話題を提供するわけでもなければ、会話を続けるわけでもない。


 そんなあたしと話して、何が楽しいんだろう。




「清瀬って、無口だよな」




 美波先輩の口が止まったのは、佐久間先生のその一言があったからだった。


 さっき美波先輩が持っていたお弁当の1つを食べ終わったらしく、空のお弁当箱をテーブルに置いた佐久間先生があたしを見る。




「昨日はあんなに怒って騒いでたのに。美波の前じゃいやに大人しいな。いや、他の同年代に対してもそんな感じか」




 観察するような、そんな目。


 そしてその観察結果を話しているような、そんな言葉達にあたしはうつむいた。


 見透かされてるようで嫌になる。




「バカね。そこが恭子ちゃんの萌えなのよ!ギャップは萌えにおいて一番大切なのよ!……まああたしは涙目な時が一番萌えるけど」

「変態」

「あんたに言われたかないわ」



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