危険ナ香リ
……なんの話をしているんですか……。
「つまりお前はサドっ気があるってことか」
「あんたもね」
さすがイトコ。
って、イトコって似るものなのかな。
「……ああそうだ。清瀬」
「ひっ、……はい?」
「なんだ今の悲鳴みたいな声。……まあいい。お前、古川(ふるかわ)祐と家が近かったな」
いきなり出てきた祐の名前に、ドキッとして箸を揺らした。
佐久間先生はあたしに背中を向けてファイルを取り出したから、なにも気づいてはいない。
だけど美波先輩は気づいたみたいで、瞬きを繰り返していた。
ま、まずいなあ。
美波先輩の視線から逃げるように外を見ると、穏やかな青空が見えた。
「そいつにこれ、渡しておいてくれないか?」
微かにタバコのニオイがした時には、すでに佐久間先生があたしの目の前に立っていた。
差し出された封筒を手に取って、まじまじとそれを見つめる。
なんだろう、これ。
「この間部活で怪我したらしい。だから、その分の治療代の」
「え?祐、怪我したんですか?」
そんなの、知らなかった。
部活でってってことは、バスケで……。
「……随分食いついてきたな」
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