危険ナ香リ


 ハッ、として思考を止めた。


 瞬きをしている佐久間先生の背後で、美波先輩が顎に手を当ててあたしを見ていた。


 “ああなるほど”と言っているように思えて、思わず顔を赤くしてしまった。


 ……あたしが祐を好きだって、美波先輩にバレた……。




「と、ところで先生。なんであたしと祐が家が近いって知ってるんですか?」




 いたたまれなくなって、急いで話題を変えた。


 すると佐久間先生は不思議そうな目を向けてくる。




「……美波情報。あいつ、お前の情報片っ端から集めてたぞ」




 ……なんてこと……。


 話を変えるためだけのはずが、まさかの恐ろしい出来事が発覚してしまった。


 美波先輩って……いったい……。




「いやでも、今のは食いつきがよかったな。反応が早かったぞ。古川祐になにか」

「なにもないです!祐はただの……幼なじみです」




 やばい。自分で言って悲しくなった。


 でも事実なんだから、仕方ない。




「ふぅん。まあ別に、生徒の私生活に関わりは持つつもりはないからいいか」

「……」

「あれ美波。なにそんな険しい顔してんだ」

「……すんごい不愉快だわ」

「は?」




 悲しんでも仕方がない。仕方がないの。なにもしなかったあたしが悪いんだから。


 そうだ、祐、怪我大丈夫なのかな。


 心配になってきた。

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