危険ナ香リ
その後、鳴り響いたチャイムを合図に美波先輩と一緒に保健室をでた。
美波先輩は少し不機嫌そうな表情を浮かべ、
「……誰にも言わないから」
そう言って、あたしを教室まで送り届け、去っていった。
言わない、というのはきっと、あたしが祐を好きだっていうことだ。
それはすぐに分かった。
けど……なんで美波先輩はあんなにも不機嫌そうだったんだろう。
あたしは昔から人の気持ちを理解する能力が欠けていた。
なんとなくの単位で理解はできているつもりだ。
だけど、あたしは自分自身で“欠けている”と思っている。
柚乃ちゃんと比べたら。飛鳥くんと比べたら。
人と比べたら、あたしはあらゆる部分で“欠けている”。
その欠けた場所を補うだけの技量もなくて、あたしはただただ“欠けている”。
もっと、誇れる何かが欲しい。
だけど、誇れるものが何もない。
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