危険ナ香リ
「清瀬。いつまでそうしてる気だ」
え、と声を出して隣にやってきた佐久間先生を見る。
それから自分の手を見ると、あたしの手には掛け布団が握られていた。
……これ、いつから握ってたっけ?
「どうした?美波になにかされたなら言え」
どうやらあたしは途中で思考の世界へ飛んでいたらしい。
これじゃ、掃除が終わらないよ。
「す、すいません。平気です」
そう言いながら少しずつ離れる。
だって、タバコくさい。
昨日からずっとテーブルの上にある消臭スプレーを急に佐久間先生にふりかけてやりたくなった。
「そんなにタバコのニオイが嫌いか?」
あたしが少しずつ離れていっていたことに気づいている佐久間先生の声が聞こえた。
顔を見ると、なぜか楽しそうだった。
「なんで笑ってるんですか」
「いや、思い出し笑い。ほら、昨日の“肺が真っ黒になる”って話」
「……どうせあたしはガキですよ」
ぷいっとそっぽを向いてやると、佐久間先生は噴き出して小さく笑った。
もうっ。やっぱり嫌だ、この人。
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