危険ナ香リ


 必死で避けていたのに、なんでこんな養護教諭には縁もゆかりもない場所で会っちゃうの!?


 なんだか悲しくなってきた。




「へぇ。お前、本読むの?」

「……ただの資料探しです」




 顔に薄く笑みを浮かべている佐久間先生に素っ気なくそう答える。


 すると、佐久間先生が小さく笑った。




「俺、もしかして嫌われてる?」




 ……あんなセクハラ行為をしたんだから、嫌われて当然だ。


 ふんっ、とそっぽを向いて、早速資料探しに向かう。


 佐久間先生の小さく息をはく音が聞こえた気がした。




 静かな空間の中で、佐久間先生の低い声は本に囲まれた中でもよく聞こえてきた。


 どうやら、佐久間先生は借りていた本を返しにきたらしい。


 先生が読書だなんて、意外。


 奥へ奥へと進みながら、こっそりそんなことを思ってみた。


 ……にしても。資料、ないなあ。




―――― ガラッ




 うちの学校の図書室は他校にくらべると広い方だ。


 そんな広い図書室で、ドアが開く音が聞こえるのは、静かすぎるせいだった。

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