危険ナ香リ
「あ!佐久間先生じゃぁん!」
高い声が鼓膜を揺さぶった。
聞き覚えのあるその声に、ビクリと肩を動かして、意味もなく隠れた。
どうせ隠れなくても見つからない場所にいたんだけど、思わず隠れてしまった。
だって、その人はあたしが苦手な人だったから。
「なになに?なんでこんなトコにいんの?」
「本を返しに来たんだよ。それより、どうしてこんなところにいるんだ?佐藤」
―――― 佐藤さん。
あの怒られた日から、なんとなく近づき難くなっちゃった。
いや、その前からあんまり近づいてなかったんだけど、でもさらに近づきにくくなったんだ。
それに、佐藤さん、きっとあたしのこと嫌いなんだろうな。
前に目が合った時思いっきり嫌そうな顔されたことを思い出して、うつむいた。
「あたし?あたしは、清瀬さん探してんの」
……え?
な、なんで佐藤さんがあたしを探して……。
だって今日は佐藤さん日直じゃないし、掃除だってないし。
なんであたし、探されてるんだろう。
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