危険ナ香リ
なんで、ここ、学校なのに。
だってもう放課後だからって、なんで、そんなところで。
なんでよりによって今なの。
「それにしても、図書室にいるって聞いたのに、どこにもいないなあ。清瀬さん」
「ああ、清瀬ならここにはいないよ。どこに行ったかは知らないけど、ここにいないことだけは確か」
「そう?教えてくれてありがとね、先生。バイバイ」
―― バタンッ
「……教育者が嘘をつくなんて、僕はいったい誰を信じたらいいんですか」
「時には嘘をついた方がいい時だってあるんだよ。佐々木(ささき)」
「僕の名前、知ってたんですか」
「一応全校生徒の名前を覚えるように努めてますが、なにか?ってか、よく貧血で保健室にきてる奴の顔覚えられなくてどうする」
「最近はよくなりましたけどね。ほうれん草の力はすごいですよ」
「じゃあこれからは教育者じゃなくてほうれん草だけを信じて生きていけ」
「そうします。……ところで僕、そろそろ帰るんで、戸締まりお願いしてもいいですか」
「え?もう図書室が閉まる時間だっけ?」
「……鈍いですね」
「確信犯だよ。鍵、そこ置いてけ」
「変なことはしないでくださいね」
「はいはい。じゃあな」
「さようなら」
―――― バタンッ
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