危険ナ香リ
しゃがみ込んで、息を殺して、泣いた。
今はもう、ひたすら泣くことしかできない気がする。
……頭の中に浮かぶのは、重なり合う2人の姿。
耳に残り続けるのは、佐藤さんの言葉。
なにも考えたくない。
そう思うのに、どうしようもないあたしは、それらを考えずにはいられなかった。
―――― ふわりとタバコのニオイを感じた。
それとほぼ同時に、頭の上に、大きくて暖かいなにかが乗っかった。
それは、あたしの髪を優しく撫でるように動く。
「悔しいくて泣いてるのか?」
いつもより、穏やかな声だった。
その声を聞いて、あたしは首を横に振って答えた。
「じゃあ、悲しいから?」
これにも、首を横に振った。
「……くから」
「ん?」
「むか、つくから」
しゃくりあげながら、弱々しく声を出した。
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