危険ナ香リ
背景は本棚。
そんな背景は絶対似合わない白衣を着た養護教諭の姿が見えた。
だけど、涙で霞んで、今、佐久間先生がどんな顔してるのか、分からない。
「先生は、美咲ちゃんのこと知らないから、そんなことが言えるんだよ!」
頬が空気に触れると、冷たい。
それは大量に涙を流しているせいだって、気づいてる。
「美咲ちゃんって、誰?」
さっき顔を上げた時に離れていったそれが……佐久間先生の手が、今度な頬に触れた。
涙を拭うその指先から、タバコのニオイがした。
「タバコくさいっ!」
「あ。ごめん」
怒鳴るとすぐに離れていった温もりに、イラッとした。
「先生なんか嫌い!」
「うん」
「バカ!」
「うん」
「ロリコン!」
「違う」
「女たらし!」
「え」
「不良!」
「ごめんなさい」
静かな図書室の中で、あたしの怒鳴り声が響き渡る。
そして、ボタボタと涙が落ちていく。
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