危険ナ香リ


 顔を真っ赤に染めているあたしの頬に、佐久間先生の手が触れる。


 すっかり冷たくなった頬に、佐久間先生の体温は心地のよいものだった。




「ここだけで十分なわけないよな。あんだけ大声で“触って”って言ってたもんなぁ」

「う、あの、それは」




 あ、あまりの恥ずかしさに泣きたくなった。


 そんなことを思っていると、佐久間先生の指があたしの涙の跡を拭った。


 冷静になって、やっと感じた。


 ……男の人の手って、固いんだ……。




「……首」

「へ?」

「弱そうだな、お前」

「な、なに言……、っひゃあ!」




 頬を触っていない、空いている方の手がスルリと首筋を撫でた。


 背筋がゾクリと震えて、肩を跳ね上がらせる。




「く、くすぐったい」

「逃げるな、こら。お前が触れって言ったんだろ」

「言、ってな、っ」




 佐久間先生の手から逃げようとして反対側に動くと、頬にあった手が移動して、逃がさないように本棚に手をついた。


 佐久間先生の手から逃げながら、それでも佐久間先生に邪魔されて逃げられなくて、どうしようもなくなってしまう。




「う、ううーっ」

「……やばい。ハマる」




 そう呟いた佐久間先生の顔は見えなかった。


 だって、くすぐったくって、目をギュッとつぶっていたから。


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