危険ナ香リ



 ……え゛!?


 いきなり誰かの声がして、ビックリして肩を跳ね上がらせた。


 佐久間先生もビックリしたようで、すぐに顔を持ち上げた。




「……なんだ、佐々木か」




 声をかけてきたのは、図書委員だった。


 ホッと息をはいた佐久間先生に、図書委員は眉を寄せる。




「なんだじゃありませんよ。心配してドアの前に立ってたら、怒鳴り声が聞こえて、それでいきなり静かになるんですもん。気になって中に入ってみたら、こんなふしだらなことを」

「ふしだら言うな」

「じゃあ、淫ら」

「……もういい」




 スパン、といい切り返しをする図書委員。


 ……あたしはその間、うつむいていた。


 ろ、廊下まで聞こえちゃうくらい怒鳴ってたんだ、あたし。


 恥ずかしい……。




「っと。悪い。少し調子に乗りすぎた」




 恥ずかしがるあたしを、パッと離した佐久間先生。


 もう、温もりが消えても寂しくはなかった。


 むしろ今は恥ずかしがることで精一杯だ。




「やっぱり、僕は教師なんて信じられません。するなと言ったのに、キチンと約束を破ってくれるなんて、ひどいです」

「うるさい。ほうれん草信者」

「で、なにかくれるんでしょう?」

「は?」

「口止め料。くれなきゃ、僕、口が軽いからみんなに言いふらしちゃうかもしれませんよ」

「……てんめぇ……」




 2人の会話が耳を素通りしていく。


 そんな中、チラリと佐久間先生を盗み見る。


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