危険ナ香リ
祐とは、あの日から……キスシーンを見てしまった日から、うまく目を合わせられなくなった。
前々からよそよそしかった態度に、さらに磨きがかかってしまった。
だって、あんなの見て平気でいられるほど、あたしは強くないから。
そんな弱いあたしは、ここしばらくの間、祐を避け続けていた。
祐も、なぜかあたしに話しかけてこなくなった。
……あたしはそれが悲しくて、だけどどこかでホッとしていた。
「ほ、ほんとうに祐が?」
信じられない。
だって、あれだけ会話してなかったから、もうすっかり、忘れちゃってるかもって……。
ピンク色の紙袋と飛鳥くんの顔を交互に見ながら、瞬きを繰り返す。
「うん」
はい、と言ってピンク色の紙袋をあたしに押し付けるように渡した飛鳥くん。
思わず受け取って、それをまじまじと見つめた。
「誕生日おめでとう。清瀬さん」
顔を持ち上げて、飛鳥くんを見ると、視線を宙に向けていた。
……どうしよう。
すごく、すごく嬉しい……っ。
飛鳥くんの言葉でようやく、あたしは今日誕生日を迎えたんだと理解できた気がして、感動した。
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