危険ナ香リ


 去年は祝ってくれたのに、今年は柚乃ちゃんが何も言ってくれなくて、悲しかった。


 祐とは、話してないから……きっと忘れられてるんだと思った。


 だけど、祐、覚えててくれたんだ……。




 ピンク色の紙袋を、壊れないように掴んだ。


 伝わる感触に、嬉しくて泣きたくなった。




「あ、あのね、飛鳥くん」

「ん?」

「祐に、ありがとうって、伝えておいてくれないかな?」




 でもやっぱり、まだ、もう少しだけこの距離感を保っていたかった。


 だってこの距離感は寂しいけれど、あのキスシーンを思い出さなくてすむ、一番いい距離感だから。




「……ん。分かった。伝えてとくよ」

「ありがとう。あとね、」

「ん?」

「ありがとう。飛鳥くん。誕生日祝ってくれて、本当にありがとう」




 今日初めて、本当に笑うことができたと思った。




「……どう、いたしまして」




 そう言いながら視線を逸らした飛鳥くんを前に、あたしはにこにこと笑っていた。


 あまり人通りが多くないこの階段で祝ってもらった今、あたしはやっと17歳になれた気がした。


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