危険ナ香リ
「お前、本当にちっちゃいなー。牛乳飲めよ」
「もうっ!そんなのいいから、早く返してくださいっ」
ピョンピョン跳ねて紙袋に手を伸ばしていると、佐久間先生が楽しそうに笑った。
「ウサギみたいだな」
「ウサ……っ。あたしは人間です!」
「例えだよ。本気にするな」
なんだか悔しくなって、跳ねるのをやめて唇を噛んだ。
まだ眼鏡をかけていた佐久間先生は、口元をゆがませて笑い、それから眼鏡を取った。
「そうだな。舐めさせてくれたら返してやってもいい」
舐め……!!
その単語に図書室での出来事を思い出して、ボッと顔を赤くした。
眼鏡を白衣の胸ポケット押し込んだ佐久間先生は、まだタバコくさい状態であたしに近づく。
後ずさりすると、すぐに真後ろにあったベッドにぶつかった。
「た、タバコくさいです……」
「そう言って逃げようって魂胆か?甘いな」
「そ、掃除」
「あとからちゃんとやってもらう」
「そんなっ」
ひどい、としか言いようがない。
あと言えるとするならば、“ロリコン”“女たらし”“不良”の3つの言葉だけ、かな。
なんて、どうでもいいことを考えていると、タバコのニオイを撒き散らす佐久間先生の長い腕が、腰にまきついた。
「この間みたく、いい声で鳴けよ。まあ、鳴いたらバレるかもしれないけどな」
―――― 泣きたくなったのは言うまでもない。
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