危険ナ香リ



 黒色の長くて艶がある細い髪。

 白い肌に、ふっくらした赤い唇。

 ぱっちり二重で、大きな瞳。それを縁取る長いまつげ。






―――― 美咲、ちゃん。






 目があってしまった以上、どうしていいのか分からずに、2人して固まってしまった。


 な、なんで美咲ちゃんがここに。

 いや、同じ学校だから、いつどこであっても不思議はないけど。

 て、てゆうか、美咲ちゃんってあたしのこと知ってるの?


 本当は、キスシーンが浮かんだ時点で悲しくなるんだろうけど、今はもう、なんだか戸惑いのほうが大きい。


 それに、あたし、少し緊張してる。




「あ、あの、えっと、清瀬先輩、ですよね?」

「え、えと、はい?」




 お互いにぎこちないのがよく分かった。


 や、やばいあたし。頭の中が真っ白け。


 ……だって、目の前に美咲ちゃんがいるんだもん。


 祐のカノジョがいるんだもん。




「あたし、安藤(あんどう)美咲って言います」

「し、知ってます」




 どうしよう。あたし、祐のカノジョと話してる。


 どうしよう。美咲ちゃん、すごく可愛い。


 声も、顔も、雰囲気も、可愛い。


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