危険ナ香リ


 もし、佐久間先生の口からそのことが暴露されたらどうしよう。


 あたしが、美咲ちゃんの名前を出して、しかも美咲ちゃんを羨んでいたと知ったら……。


 ……どうしよう。


 そんなこと知られたら、あたし、……どうにもならないけど、だけど恥ずかしい。




「さくま」

「ふぅん。そう。きみがあの、」

「せ、せんせ」

「美術部の天才少女なんだ」

「……へ?」




 言われる、と思っていたのに言われなくて、拍子抜けしてしまう。


 にっこり笑いながら美咲ちゃんに視線を向ける佐久間先生を、思わず凝視した。


 な、なんで!?

 言うと思ってたのに、なんで言わないの!?

 まあ、あたしにとってはいいことなんだけども。


 ……佐久間先生の考えが、分からない。




「天才なんかじゃありませんっ」

「またまたぁ。美術の先生、きみのことべた褒めだったけど?」

「たまたまうまく書けた作品が賞をとっただけで、」

「謙虚だな。もっと自信持ったっていいんだぞ?」




 ……ああそうでした。そうでしたね。


 にこにこと笑顔を絶やさずに会話を繋げていく佐久間先生を見て、少しイライラした。




―――― 佐久間先生は、ロリコンだもんね。




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