snow flake〜罪な恋に落ちて〜
「俺も、ほんの少し前までは働いてた」
そう言って樹はさっきと同じ笑顔を私に向け、溶けかけた氷を口に含んだ。
きっかけは大学に入ってすぐのスカウト。歌舞伎町で働いてたらしい。
自分では言わないけど、かなりの人気があったみたいだった。
もちろん、樹の容姿を見れば納得もいくし当然だと思う。
言葉には出さない私の目線に気付いたのか、
「…俺、そんな人気なかったし(笑)№3が最高かな?」
なんて、言ってのけた。
夜、
しかも歌舞伎町のホストクラブ(通称箱)で、18になりたての人間がそうそう№になんて入れない。
少なくとも私が夜の世界で知ってる限り、樹と同じ位の歳で№に入った人は数人しか知らない。
なんでもない事のように話す樹に、私は声をあげて笑ってしまった。