snow flake〜罪な恋に落ちて〜
お店に戻るだろうから、一番近い道を通るはずだ。
時刻が遅くなる程、人が増えていくようだ。
駅に向かう人並みに逆らう。
なかなか前に進まなくてもどかしい。
彼がお店に辿り着いたら、もう二度と会えないのは決まってる事だった。
どうしても、今伝えたい事があった。
しばらくすると、信号待ちの中に栗色の髪を見つけた。
(良かった…、間に合った)
息切れをなんとかやり過ごし、人混みに飛び込む。
声を掛けるより先に体が動いた。
後ろから、ジャケットの裾を掴む。
「待って、わた…しっ、聞いて…ないっ、」
振り向いた椿は驚い顔をしたけれど、それ以上に嬉しそうに目を細めた。
「姫、落ち着いて?少しはじに寄ろうか?」
信号が青に変わり、私達を避けるように人波が押し寄せる。