snow flake〜罪な恋に落ちて〜
建物の前までは来たけれど、椿に連絡を入れてないし、1人で入る勇気もなかなかなくて諦めかけた時だった。
「姫璃チャン?」
「…恋クン!!」
少し離れたトコから声をかけられた。
振り向くと、寒そうにジャケットに手を入れて歩いてくる恋クンの姿。
吐く息が白くなる程なのに、恋クンはお店の中にいるのと変わらないような格好だった。
近くまで車で来てるらしく「店まではすぐだし…、それに冬のお洒落は我慢が大事だからね!」そう言って、笑った。
「あの、この前は本当にごめん。ずっと謝りたかったけど、連絡先知らないし…本当にごめん。しかも、私お金払わずに出てきちゃったから…」
あの時は、恋クンに悪い事をしたと心から思った。
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「いや、俺の方こそ気を悪くさせちゃったなら、本当謝る。ごめん、でも…いや、なんでもない」
言葉を濁して、恋クンは頭を下げた。
彼の艶やかな髪が揺れる。
つられて、私も頭を下げた。
私達の姿は端からすれば、実に滑稽に見えるだろう。
通りに居る人は私達だけじゃない。
地面から、目だけを上に向ける。
すると、恋クンと空中で視線がぶつかった。
一緒の沈黙の後、私達は声を上げて笑い合った。
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