snow flake〜罪な恋に落ちて〜


しばらくの沈黙に耐えかねて、口を開きかけた時だった。


「―――勝手にすれば?」


そう言い残し、一方的に切れる電話。



どこまでも自分本位な樹に心底腹が立つ。


けれど、それ以上におかしな達成感が私を包む。



いつも樹の顔色ばかり伺って、自分の気持ちが言えなかった。

初めてと言っていいくらい、自分の気持ちを主張した。

こんな風に話したのは初めてだった。



(勝手にしてやるんだから!!)


樹の態度に腹が立ったのと同時に、何にも捕らわれず自らの意志で行動できる喜びにいっぱいだった。


空を仰いでも、先程のような月は見えない。


さっきまで輝いていた月は、ほんの少しの間で暑い雲に隠れてしまったようだ。



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