snow flake〜罪な恋に落ちて〜

定時を少し過ぎたところで席を立つ。
久々の仕事は疲労感と充実感、どちらももたらしてくれた。


用事があると、定時ぴったりに伊織はオフィスを出て行った。

バッチリメイクで、柔らかいコロンの香りが彼女の跡に道を作る。

すぐにデートだとわかった。



乗り慣れた電車に揺られ、家に向かう。


途中で樹にメールをした。

返信は『わかった。生姜焼き』たったそれだけ。

携帯を閉じる。
小さく笑みがこぼれた。


至ってシンプル。
送った事に対する返事と、質問に対する答え。
ただそれだけ。


最初は

(もう少し、何か言葉があっても…)

なんて思ったけど、もう慣れた。
これが彼だし、返事がないよりは大分マシだ。


今夜は生姜焼きか…

3日前も食べた気がするけど、言わないでおく。

生姜焼きは樹のお気に入りだから。
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