snow flake〜罪な恋に落ちて〜


「…姫?」


椿に声をかけられた時にはコールもラストに差し掛かかる。

と、突然マイクを向けられる。

(やばッ、聞いてないのバレた‥…!?)


助けを求めるように椿を見ると、グラスを掲げて示された。


(……!!乾杯の一言かなッ!)


頷き返すと、椿もニコリと微笑んでくれた。

間違ってなかったようでホッとした。

会話がないのに意志が通じて、なぜかくすぐったかった。

こんな感じ、いつから忘れてたんだろう。


初対面なのに、もっと椿の事を知りたくて。

隣に座ってるのに、少しの距離がすごくもどかしい。



私は、


この気持ちが何を意味するか分かってる。


椿に出会ってからずっと感じてた。


だから、

気付いちゃいけなかった。


気付いても、私には選べないから。


気持ちを押し込める。

樹がいる。

罪を背負ってる。



私にはそんな権利はない。

そう、自分に言い聞かせた。




時刻は21時を少しと過ぎたばかり。

私の忘れられない夜は幕をあけた。
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