snow flake〜罪な恋に落ちて〜
「さぁ〜てとッ。じゃ、私も帰るね?」
2人の姿が消えた事を確認する。
時刻は22時少し前。
樹にメールをしなければいけないし、1人で居るような所じゃない。
奥まった所にあるとはいえ、VIP席。
1人だと余計に目立つ。
席を立とうとバッグに手を伸ばす。
その手に重なる大きな手。
(もぉぉ〜〜、今度はなに…)
さっきから椿のペースに巻き込まれて、いつもの私じゃいられない。
一線引いて、
外から物をとらえる。
なんでも、
半分冗談。
半分本気。
最初から何事も本気になんてならない。
傷つくのはもうたくさんだった。
なのに…
「俺、姫の事全然知らない。もっと居てよ?」
本気とも、嘘ともとれない。
だって、笑顔なのに瞳が真剣で掴まれた腕が痛いくらいなんだ。
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