snow flake〜罪な恋に落ちて〜



「つ、つば…き?…離して。私、帰らなくちゃ…」

動く事も、触れた手を離す事さえ許されないような、

そんな瞳に射抜かれる。


「……ねぇ?俺が『嫌』って言ったら?そしたら、姫は帰らない?」



違うよね?

本気で帰りたいなら、姫みたいな子はとっくに帰ってる筈じゃない?

俺の手、払っていけばいいだけだよね?

なのに、

そうしないのはなんで?



相変わらず笑顔だったけど、言う事は核心を付いてて、心を鷲掴みにされたみたいだ。



図星だった。


椿がいう通り、心から帰りたいなら無理矢理でもこの手を解いてる。


けれど、そうしないのは、

『しない』のではなく、『できない』の。

答えは一つしかなかった。


(…私、椿の事もっと知りたい。帰りたくないよ…)

そう言えたらどんなにいいか。

ただ、忘れちゃいけない。


私には樹が居る事を。



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