snow flake〜罪な恋に落ちて〜

Ⅵ―加速―――――



待つように言い残し、本当に椿は席を離れた。


正直ホッとした。


自ら“残る”選択なんて選べるワケない…

例え、それが私の本心であっても。



彼が歩む先には、椿が好きで、椿に会いたくて、少しでも自分を見てほしいと思う女性が待ってる。

“ホスト”との時間を高いお金で買う人が集まる場所。


だからと行って、ホストが悪い職業だと思わない。

私も夜の世界を経験してきたから少しなら分かる。

この仕事がどんなに大変か。


高いお金を払うだけ、価値のある存在でなければならない重圧。

お客様が一番好むように自分を創り変える。


本当の自分が分からなくなる事さえあった。


最初から、本当の自分なんてなかったかもしれないけど。



彼が女性に与えるのはきっと、癒やしだったり、優しさだったり、あの“笑顔”だったりするんだろう。



.
< 80 / 152 >

この作品をシェア

pagetop