snow flake〜罪な恋に落ちて〜
なのに、
「俺、そんな事考えてないし。店を出たら俺はホストじゃない。22のただの男だから」
姫を帰したくないのは、ホストの椿じゃなくて…
姫に恋した椿だから――――。
彼は耳元でそう、甘く囁いた。
照れた様子一つない。
告白ともとれる椿の言葉。
心臓が壊れそうなくらい早く脈打って、それはさらに“加速”していく。
許されない私の想いと共に。
視界が明るくなって、椿の長い指が私の輪郭をなぞる。
「姫、顔あげて?」
首を横に振る。
何が起きてるのか分からない。
椿が何を言ってるのか分からない。
頭の中がおかしくなりそうだった。
「…あげてくれないなら、一生ここから出れないかもよ?」
意地悪く言われて、ゆっくり顔をあげた。
この時の顔はりんごよりも赤かっただろう。
瞬間、椿の整った顔が近付いて思わず目を瞑った。
さっきよりも近くに柑橘系の香りを感じ、大好きなVeuve-Clicquotの味に言葉を失った。
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