奇跡の軌跡
「………っは」
「ぇ、」
「あっははは!はははっ」
目の前の少年は声を上げて涙が出るまで笑った。
私はその光景を蔑むような目で見下した。
放課後の教室の片隅に座り込み、声を上げて笑う少年は
何処かで見たことがある気がした。
「はーっ…笑ったぁ……」
漸く笑い終えた彼はすく、と立ち上がった。
少し私より大きい…まぁ中学の男女なんてそんなもんよね。
「ね、聞いてた?」
「ん、なに??」
本末転倒。こいつばかじゃないの。
「だから」
目線を下に落とし溜め息を一つ。彼の眉が動いたことには気付かず私は続けた。
「誰って聞いたで、しょ…?」
顔を上げた私は驚いた。
そこにはさっきまでとはまるで別人の泣きそうな彼が立っていた。
私の足下に向けられている目や何か言いたげな口元。
その一つ一つが私の胸を締め付けた。何なのかは全く分からない。もう解らない。
ただ寂しいような懐かしいような…この感情にきっと名前はない。
気付くと私は彼の頭を撫でていた。