kiss
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なんだろう?

少しだけ縮まった距離に首を傾げると、柳くんが苦笑いを浮かべる。

ころころと表情の変わる子だなぁ。


「鈍感な上に無防備。先輩タチ悪いです」


「意味わかんない。貶してるの?」


褒められていないことくらいはわかる。

柳くんはゆるゆると首を横に振って、ほんの少しだけ私より背が低い柳くんを見る。


「貶してないですよ。警告みたいなもんです?」


警告?

ますます意味がわからない。


「とりあえず帰りませんか?」


黙り込む私に柳くんはやっぱり緩く笑う。

かわいい。


「先輩?」


帰り道、並んで歩く私たちの距離は近くもなく、遠くもない。

でももう少し近づきたいかもしれないなんて思う自分に驚いた。


「なに?」


「俺、バスケ部入ろうかなって思ってるんです」


「うん。似合いそう」


バスケットボールを追いかける姿が容易に思い浮かんだ。


「中学からやってたんです。だから続けようと思って」


ちらっと隣を見ると、柳くんはまっすぐ前を見ていた。


「好きなんだね、バスケ」


じゃなきゃ高校でも続けようとは思わないだろう。

うちの高校は別に部活は強制じゃないし。



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