kiss
.



「…………可愛いです」


小さな声だったけど、人がいない後ろの席ではその声も私にちゃんと届いた。

可愛い?

誰のこと?

首を傾げる私を見て柳くんがため息をした。

なんでため息?


「梨麻先輩って、鈍感」


「は?」


なんで鈍感?

柳くんの言葉を理解するのは中々難しいみたい。


「…あー、先輩、のことです」


「へ?」


「先輩が可愛いって言ってるんですって」


柳くんの言葉の意味を理解するのに時間が結構かかってしまった。

5回も頭の中で復唱してやっと理解できた。

そして理解できた瞬間、柳くんほどじゃないと思うけど私まで赤くなった。

顔が、熱い。


「あ、真っ赤」


嬉しそうに笑った柳くん。


「っわざわざ言わないで」


ふいっと柳くんから顔を背け前を向くといつの間にか役割が決まったらしく委員会が終わるところだった。

終わるなりぞろぞろと周りの生徒たちは帰って行って私と柳くんだけが教室に残った。


「梨麻先輩」


しんとした教室に柳くんの声がやけに響いた。



.
< 5 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop