kiss
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不思議と言われて喜ぶ人はいないよね。

目の前の男の子を見ればつくづくそう思える。


「不思議、ですか?」


「うん」


意味を考えてるのか柳くんの眉間にシワが寄る。


「俺、不思議って言われたの初めてなんですけど」


「そう」


ますます首を捻る柳くんが可愛い。


「柳くんが言ったことは現実になりそうだから不思議ってこと」


可愛い柳くんをもっと見ていてもよかったけど、時計はそろそろ下校時刻が迫ってる。


「……俺、現実にしますよ」


「うん」


私がイスから立ち上がると、柳くんも立ち上がる。


「先輩も俺を好きになってください。っていうか、させます」


教室から出ると柳くんが手首を掴んだ。


「どうしたの」


「とりあえず、株上げるために一緒に帰らせてください」


にっこり微笑んで言われれば、拒否することもできなくて。

言葉の代わりに首を縦に振った。

夕日に照らされた柳くんの笑顔がキラキラしていた。



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