Half Heart
トイレを出た後、私は静かな放課後の校舎内を歩いた。
誰もいない教室を何度も通り過ぎて、私は自分の教室に行き着いた。
やはり人はいなかった。
佐々木君は委員会に出ていていないし、みんな部活に行ってしまっていない。
こういう時、何かの部活に入っていれば良かったとつくづく思う。
なんにせよ、今の私にとって誰もいないのは、有り難い。
まだ気分が落ち着いてこないし、会ったところでまともな会話ができるかどうかも不安な状態。
私は早々と帰路に就くことにして、鞄を手にして階段を駆け降りた。
下駄箱の大半を革靴が占めていた。
その他少数の上履き組はバイトをする者、遊びにふける者、それぞれだったが、今日の私は、どちらでもなかった。
何をするでもなくぼんやりしようと思った。
24番の下駄箱を見る限りだと真未達は先に帰ったらしい。
私と佐々木君に気を利かせたつもりだろう。
彼氏ができると友達というのは、やけに気を利かせるものだ。
それを耳にしながら外に目をやると、どんよりとした空の下、運動部の掛け声が行き交う。
革靴に履き変え、校舎を後にしようとした時のことだった。
いつの間にいたのだろう。
私が通ろうとしていた下駄箱沿いの道に見知らぬ男子が壁にもたれ込んでいる。
さっきまで居た気配などなかった。
耳にイヤホンをして、手にはゲーム機をカチカチいわせている。
いっこうにどきそうになかったので、私は隣の列の下駄箱にまわって行った。
すると、突然、目の前に大きな影が立ちはだかった。
私より背が高いそれは、私の頭の中を真っ白にさせた。
どういう感情からそのような行動に移ってしまったのか分からない。
私はその人を突き飛ばした。
しかし、少しよろけたもののどいてくれる気配も見せなかった。
私の心拍数は、必要以上に上がっていたのだろう。
冷静さを失っていた気がする。
「なんですか?」
。