【完】冷徹仮面王子と姫。
「……広い、ね」


「そうか?」



 十畳分以上はあると思う。この広さに対する物の少なさが殺風景さに拍車をかけていることに今気づいた。



「うん…あたしの部屋なんて大体六畳くらいだもん」


「ふーん」



 本当は気絶しそうなほどにドキドキしているはずなのに、普通に話せてしまうあたしがここにいて。


 慣れとは怖いものだと思った。



「―――及川」



 ……隣にいるのに、改まって名前を呼ばれて。


 吃驚するほど綺麗に視線が重なったから、心臓が破れるかと思った。



「母さんが言ったことだけど。気にしなくていいから」



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