【完】冷徹仮面王子と姫。
 氷室君の中にあるのは確かに「心配」で、それは重々分かってて。


 それでも一緒にいたいと思ってしまうあたしは、贅沢なのだろうか。


 意識しちゃってたなんて。言えない。



「ほら。…荷物は持つから」



 立ち上がる氷室君の顔の辺りを、ぼんやりと見つめているあたし。


 さっと荷物をまとめて帰る準備をするまでに、数秒掛かった。



 あたしの家の前まで送ってくれた。一人分しか空いてない席に座ろうとした男性に、あたしの具合が悪いからと、席を代わらせてくれた。



 優しいの。



「じゃぁ……ね」



 たった一言を言い終えるのに、躊躇したあたし。


 離れたくないなんて今更じゃなくても言えないよ。


 正面の道路の辺りで視線を彷徨わせるあたし。


 そんなあたしに。



「明日、学校来れそうか?」



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