【完】冷徹仮面王子と姫。
 唇を歪め、テーブルに視線を移す。


 …僅かにそのテーブルから、焦点はずれている。


 ゆっくりと瞼を閉じる。




 本当は―――…




 現実ではここには居ない人の姿が、浮かんでくる。



 あの時飛び退きそうになったのは。



 自分の行動に驚いて、飛び退きそうになったのは――――――




 俺、女嫌いのはずだったんだけど。


 あいつだけは、何か特別なものがある気が、した。


 名前しか知らなかったのに告白を受け入れてしまったのも、きっとそのせいで。



< 167 / 223 >

この作品をシェア

pagetop