【完】冷徹仮面王子と姫。
 視界に入ってきたただ一人、それは紛れもなくあーちゃんだった。



「何で」


「だって、一香何も話してくれなさ過ぎて」



 あっけらかんという彼女には、悪びれた様子など一切なく。


 むしろ、自分自身の行動を振り返っていた。


 本当にあーちゃんに、何一つ話していないことに気づく。



「あたしに気を遣う必要なんて、最初からないんだから。どうしても気になったから呼んじゃったけど…王子と、なにがあったの?」



 単刀直入な質問。


 だけどその声は、いつもよりずっと優しかった。


 ……だからこそ、申し訳なさ過ぎる。


 あたし一人で解決しない問題だと、分かっているからこそ。



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