【完】冷徹仮面王子と姫。
「あの子が教室でめそめそ泣いてたから、何かあったのかと思って」



 溜息混じりにそう言ったアゲハは、ある程度の距離は保ちつつ、恭一に近づく。


 視線が合えばそれを認識できるほどになった時に、立ち止まった。



「どうせ屋上だろうと思ったから来たのよ」



 その距離だからこそ、恭一はアゲハの呆れた目を確認する羽目になった。



「そうか―――及川はどうしてる?」



 アゲハは目を伏せ、今度こそ溜息そのものを吐き出す。



「随分直接的に聞くのね?」


「…山浦は、正常な状態ならちゃんとした判断力を持ってると思ってるし。及川にも、必要な時だけ話すだろ。

じゃないとあいつ今頃―――」


「あぁはいはい、さすが“王子”。
…という訳で、言わないわ。どうしても知りたいなら、一香本人に聞いたらどう?」



 ……先程の言葉の通り、アゲハの判断力を信じているからこそ。


 恭一はそれ以上、食い下がる事もできない。



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